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知財判決ダイジェスト

特許 令和7年(行ケ)第10077号「電池」(知的財産高等裁判所 令和8年7月29日)

【事件概要】
 原告(特許無効審判請求人)による審決取り消しの訴えには訴えの利益が認められないとの被告(特許権者)の主張が認められなかった事例。
▶判決要旨及び判決全文へのリンク

【争点】
 特許権が存続期間満了により消滅しており、また、別件訴訟において被告(特許権者)の原告(特許無効審判請求人)に対する損害賠償請求を一部認容する判決が確定している状況で、当該特許に対する特許無効審判の請求不成立審決の取り消しを求める訴えに、訴えの利益は認められるか。

【結論】
(1)特許権の存続期間の満了後であっても、特許権侵害を問題にされる可能性が少しでも残っている限り、そのような問題を提起されるおそれのある者は、当該特許を無効にすることについて利害関係を有し、特許無効審判請求を行う利益(したがって、特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益)を有することは明らかである。したがって、訴えの利益が消滅したというためには、客観的にみて、原告に対し特許権侵害を問題にされる可能性が全くなくなったと認められることが必要であり、特許権の存続期間が満了し、かつ、特許権の存続期間中にされた行為について、原告に対し、損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり、刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存することが必要であると解すべきである…。

(2)これを本件についてみると、本件特許権は既に存続期間満了により消滅しており…、また、別件訴訟において被告の請求を一部認容する判決が確定しているが…、別件訴訟において対象とされた原告の製品は製品名で特定された蓄電システム13品目及び電池パック1品目であり、原告がこれら以外に本件特許権の権利行使の対象となり得る製品をその存続期間中に製造販売していた可能性を否定することはできない。そうすると、原告に対して損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり、刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存するとはいえないから、本件訴えについては訴えの利益があると認められる。

【コメント】
 被告(特許権者)は、本件特許権は存続期間により消滅しているし、また、別件訴訟において被告(特許権者)の原告(特許無効審判請求人)に対する損害賠償請求を一部認容する判決が確定しており、仮に本件審決が取り消されたとしても原告(特許無効審判請求人)は再審の訴えを提起することができない(特許法第104条の4)から、訴えの利益は認められないと主張したが、裁判所は採用しなかった。

 訴えの利益についての裁判所の判断は、平成30年4月13日に知的財産高等裁判所が言い渡した大合議判決(平成28年(行ケ)第10182号、第10184号)と同じであり、目新しい点はないが、特許権者の相手方に対する損害賠償請求を認容する判決の確定後に当該特許を無効にしても当該確定判決には影響が及ばないこと自体は、当該相手方が特許無効審判を請求する利益(したがって、当該請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益)が消滅したというための特段の事情に当たらないことを明らかにしている。

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